Lab on a chip

 
 
 

マイクロチップでの糖転移酵素の連続反応により4糖を合成




 細胞内における糖鎖修飾メカニズムは未知の部分が多く、生命をシステムとして理解する上でそのメカニズムを解明することは極めて重要なことである。本研究では直接の可視化、定量化が困難である細胞内糖鎖修飾において、ゴルジ機能を模倣するマイクロチップを作製し、この反応の制御を行うことで細胞における制御機構の解明を目指しています。

 糖転移酵素を固定化したビーズをマイクロチャネル内に連続して充填することにより反応領域を構築した。また、マイクロチップとLC/MSを連結したオンライン分析システムを構築した。プロテオグリカンにおける二糖繰り返し領域である硫酸化グリコサミノグリカン(GAG鎖)とコアタンパク質との間に共通して存在する橋渡し構造(GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-)を標的としました。

 GalT-Iによる糖転移反応による二糖合成について検討したところ約97%の収率が得られました。反応時間は流速に反比例しますが、流速はゴルジ体内における物質輸送に相当すると解釈することができ、ゴルジ機能構築のための重要なファクターであると考えられます。このようにして多段階反応を行いマイクロチップ上で四糖構造の連続合成に成功しました。

  1. Ono, Y.; Kitajima, M.; Daikoku, S.; Shiroya, T.; Nishihara, S.; Kanie, Y.; Suzuki, K.; Goto, S.; Kanie, O. "Sequential enzymatic glycosyltransfer reactions on a microfluidic device: Synthesis of a glycosaminoglycan  linkage region tetrasaccharide" Lab. on a Chip., 2008, 8. 2168-2173.



  1. 小野さん特許事務所


キャピラリー電気泳動下マイクロ反応



 キャピラリー電気泳動は、HPLCに比較して格段に分離能が高いため多くの物質の混合物の解析に適しています。微量分析に適している一方で分取には不向きといえますが、多検体を迅速に解析したりする場合にも適しています。私たちは、「微量分析」といえば放射性同位体を用いる方法が良く知られていますが、キャピラリー電気泳動が代替法となると考えて研究を行いました。[1]

 また、キャピラリーを反応漕と見立てこの内部で酵素反応を行う、キャピラリー電気泳動下でマイクロ反応について研究しました。困難な点は、糖鎖はポリオール性の物質で一般的には電荷を持ちませんので電気泳動されません。そこで、ホウ酸エステルを形成して泳動させたいのですが、酵素反応はホウ酸緩衝液中では進行しません。困っていたのですが、リン酸緩衝液とホウ酸緩衝液の「プラグ」を形成して拡散を期待しつつ酵素反応と分離の両者を達成できることを示しました。[2,3]


  1. 1.Kanie, Y. Kirsch, A. Kanie, O. Wong, C.-H. Enzymatic Assay of Galactosyltransferase by Capillary Electrophoresis. Anal. Biochem., 1998, 263, 240-245.

  2. 2.Kanie, Y. Kanie, O. Electrophoretically Mediated Reaction of Glycosidase at a Nanoliter Scale. Electrophoresis, 2003, 24,1111-1118.

  3. 3.Kanie, Y. Kanie, O. Electrophoretically Mediated Microscale Reaction of Glycosidase: Kinetic Analysis of Some Glycosidases at Nanoliter Scale. Carbohydr. Res., 2002, 337, 1757-1762.


詳細

 

微量分析



動機

もともと機能性の物質(医薬や農薬、フェロモン等)の合成に興味があったのですが、いざ活性測定をしようとすると共同研究しかすべが無い。合成って時間と労力の割にはできる量が一般的に少ない。

この理由で通常の測定技術ではせっかく合成しても活性を知ることができないなんてことがしばしばあります。これでは本末転倒です。と言うようなわけで、微量分析が必須でした。

基本的には他人のためにどうしようなんてそんなおこがましいことはありませんが、きっと自分の役に立つことは他者の役にも立つことと信じています。


その他

アフィメトの核酸のフォトマスキング技術と合成を融合した論文や、ゲルろ過チップの論文を見て、「未来が見える〜」とか言っていた頃にどうしても自分たちでもやりたかった記憶があります。



特許





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