「産学官連携、研究成果の活用、および研究開発の促進に資することを目的として、国内の大学・公的研究機関等に関する機関情報、研究者情報、研究課題情報、研究資源情報を網羅的に収集・提供しているサイト」研究開発支援総合ディレクトリ(ReaD)が「運用」されています。しかし、データベースの構築の手法と運用の方法に問題があると考えられますので、ここで議論をしてみました。
ReaDのサイトによれば、「ReaDに登録いただきました情報は、以下のとおり国等の学術・科学技術政策立案の調査や統計利用目的でも有効活用されています。」として、表のように利用例が挙げられています。
さて、このように運用されている本データベースの信頼性について疑問点がありましたので以下に考察してみます。
データベースは収録数と項目数が多ければ多いほど様々な利用が考えられます。これについては、サイト内において「利用価値がある」との主張を開発者が行っています。必ずしも有用性を否定するものではありませんが、このデータベースはサイト内に公開されている「委員会資料」 によればまだ完全ではありません。これをそのまま多様な目的で利用することには危うさがあります。統計調査にも利用されているようですが、統計調査では常に調査対象集団が全体を表しているかが問題となります。委員会資料には「個人情報に関心の高い研究者の登録が期待できない」ことを述べていますが、これは、「特定の集団」の情報が欠如していることを示しています。企業における基礎研究者である私は、ReaDの存在すらつい最近(2009年)になるまで知りませんでした。
いくつかの問題点について事務局に問い合わせ、頂いた返答から更なる問題点が浮き上がってきましたのでさらに考察をしてみます。

研究者情報については、研究に従事している方であれば、
登録は機関情報の登録有無にかかわらず、いつでも可能であり、
いずれの情報も任意登録であるので、義務ではない。
問題点
データ入力が個人(データの信頼性、正確性、完全性に問題)

網羅性の向上のために次のような取り組みを考えている。
1)研究者情報登録時の負担減(J-GLOBALに登載される文献や特許から研究者の業績と思われる候補リストをサジェストし入力支援)。
2)J-GLOBALでの高付加価値化、認知度強化による登録インセンティブの向上。
また、更なる網羅性向上策として、
3)J-GLOBALに登載された文献の著者や特許の発明者をもとに、研究者に関する情報を機械的に収集する可能性についても検討している。
問題点
1:依然としてデータ入力が個人であり問題解決とならないばかりか、別の不完全なデータベース情報に依存する。
2:データベース作製側の能動的な改善に対する努力ではなく、個人への圧力を強める意味がある。既に、サイト中で上述のように様々にデータが活用されていると主張しており、このようにして業務とは無関係な個々の研究者に行わせようとする発想であり、国家規模のハラスメントと理解できる。
3:これのみが真の対応策
登録作業そのものが義務ではないが、データベースは運用されるという構造は、1)入力された個人データの信頼性や完全性、2)データベース全体の完全性、に関する問題を含んでいます。これは、データベース構築の際の構造的欠陥と考えられます。これらの問題に対して、入力「サジェスト」(これは、一般的な言い方をすればアシストと思われます)することで今後入力データの信頼性の向上を図ろうとする考え方では、登録に対する賛同者のみのデータが正確となり非賛同者のデータそのものが欠落してしまうという欠陥があります。次に、付加価値や認知度の強化によるインセンティブの向上により入力を促す考え方では、やはりデータの完全性への取り組みとはなり得ないばかりか、「「付加価値」の恩恵に預かることができないのは入力に賛同しない結果である。」との意味合いにも理解可能であり社会的ハラスメントの構図と受け取られます。しかし、このままではデータベースとして不完全ですので何らかの方法で不足データの登録を行い、データベースの完全性に対して取り組む必要があります。非賛同者分のみを母体が入力し充足することは賛同者、非賛同者間の不平等に繋がります。「受益者負担」とすることも、本来の目的と食い違います。したがって、入力作業は開発者が何らかの形で行うことが強く望まれます。第3の可能性として機械的に情報収集する可能性についての検討がありますが、残念ながら時系列で最後の方法となっています。
皆が無料で利用できるデータベースの構築、運用は、非常に良い考えと思います。このようなデータベースの整備により従来見えてこなかった科学技術分野の側面も見えるようになる可能性もあります。このためには、あるべき努力の積み重ねにより真に利用価値の高いデータベースとしていくことが望まれます。
2009年8月27日
日本でも情報サービスが政府主導で始まりました。まだまだ発展途上ですが多様なユーザーが期待しています。
関連のサイト
表
利用機関・制度
利用目的
利用情報
内閣府
1.第3期科学技術基本計画推進にあたっての調査
2.科学技術政策推進に係る隘路調査
3.イノベーション戦略の出口側にかかる調査
(いずれも、内閣府の委託業務として、みずほ情報総研株式会社が実施)
研究者
特許庁
平成20年度大学知財研究推進事業において大学研究者による特許出願の状況を調査するために利用
(特許庁の委託業務として、財団法人知的財産研究所が実施)
研究者
文部科学省
科学技術政策研究所
科学技術人材等に関する調査研究において統計分析のデータとして利用
研究者
国立情報学研究所
学術研究活動に関する動向を把握するための研究及び統計分析のデータ等として利用
研究者、研究機関
研究課題、研究資源
科学研究費補助金
「知識の生成・移転と組織能力に関する定量分析:科学型イノベーションへの展開」の調査研究において統計分析のデータ等として利用
研究者、研究機関
厚生労働科学研究費補助金
「こころの健康科学研究事業」の調査におけるアンケート対象者の選定
研究者
大阪府立産業開発研究所
「オープン・イノベーション時代における企業研究所と中小・ベンチャー企業の研究開発連携」の調査におけるアンケート対象機関の選定
研究機関